4文字のTATOO

今夜も、何処に居ても見える数は同じ月を見上げ、彼方へ話しかける。
今、この未曾有の事態に、彼方が居ないことを、何度恨んだことだろう。
どんな時でも、どんなものにでも、優れた感性を見せて、
何度も私達を魅せてくれていた彼方が、もし、今ここに居てくれたなら…
きっと、不安も何も消し去ってくれていただろう。
居ない人を求めても仕方がない。それでも前に歩いていかなければならない。
分かっているし、そうしているつもりだけれど、
ねえ、今だけは、この時間だけは、良いよね。
彼方が居ない恨み節も、今だけは受け止めてよ。
誰よりも何よりも優しかった彼方だから、許してくれる、よね。

決して塞がらない傷跡に、自ら刻みつけた4文字のTATOO。
彼方の名前は、一生この身に、この心に刻みつけて、生きていく。