12
5

「いよいよだな、如月」
戦いを前にした背中に声をかける。「ああ」と応える彼の声は、やや震えているようだった。
これまでの血の滲むような努力を、俺はずっとそばで見てきた。実際に血が滲んでいるのも目にした。
「お前なら必ず勝てる」
ふいに如月が振り向いた。
「本当なら、この場に立っているのはお前だったはずだ。君島」
俺たちは互いを認め合うライバルだった。
これ以上続けると命に関わる。
非情な現実を突きつけられた俺は引退を余儀なくされた。
「如月」
「行ってくる」
戦いの舞台に赴く強敵(とも)の後ろ姿を、俺は万感の思いで見送った。

「さあ、今年もやってきました。ケツに挟んだ割り箸を1分間で何本折れるかを競う”ケツパッキン”世界大会。今大会ではどんな大記録が生まれるでしょうか。今、各国の代表選手がふんどし一丁で入場です!」

頼んだぞ如月。
大歓声を耳にしながら、俺は思わずケツに力が入った。
青春
公開:20/08/04 19:08
空想競技

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容