パーカッションメンテナンス

8
6

 俺はテレビを見て唖然とした。
 そのテレビ番組に親父が出ていたからだ。パーカッションメンテナンス競技の決勝戦だった。パーカッションメンテナンスとは家電や機械を叩いて直す修理技術である。
 決勝戦は4本足の大型ブラウン管テレビだ。砂嵐の画面に映像を映し出すことができれば優勝だ。対戦相手も同年代の親父だった。
 両者の激しい叩き合いが続いた。
 突然、親父はテレビの足の下へ滑り込んで底を叩いた。トン!
 親父の優勝が決まった!

 俺は実家に帰り、親父に頭を下げた。
「親父、弟子にしてくれ」
「バカ野郎!」
 親父に叩きつけられた。
「ロックバンドの夢はとうした? そんな簡単な夢なら二度と家に帰ってくるな!」
 無理はない。バンドマンになることに猛反対され家を叩き出されたのだ。

 三年後。俺はドラムの腕を叩き上げ、ドーム球場の舞台に立った。
 球場の片隅で、親父は涙を流して手を叩いていた。
その他
公開:20/08/05 18:37
空想競技 パーカッションメンテナンス

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容