21世期のヒーロー

「物干し竿のコジローか、二刀流のムサシか」
海岸で対峙する2人を見下ろし、世界中に向けて俺は実況を開始した。波打ち際に浮かぶペットボトルが他人事のように寄せては返している。
勝負が始まり、2人が素早く動き出した。コジローは物干し竿を振り回し、一方のムサシはコジローの隙を狙い、両手を千手観音のように素早く動かした。両者譲らずの展開。1時間が過ぎた瞬間、２人がピタリと動きを止めた。
決まったーー。
「なんと！　痛恨の分別ミス。コジローがペットボトルをアルミ缶の分別カゴに！　重量では勝っていたのに無念。コジロー、敗れたり！」
表示されたゴミ拾いバトルの結果を叫んだ。
物干し竿のように長いゴミ拾い用トングを投げ捨て、コジローは泣き崩れた。
「泣くなコジロー。君たちのお陰で世界は今日も綺麗になった！」
日々汚れる世界をゴミ拾いバトルで浄化する熱き侍たち。泣くなと言った俺の方がいつしか泣いていた。