金庫の品

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屋敷の主人が亡くなったとの連絡を受けて、遺品整理の業者が飛んできた。
仕事一筋と顔に書いたベテランは一通り部屋を見回すと、テキパキと持ってきた箱に詰めていったが、押し入れの奥にいかにも価値のありそうな金庫を見つけた。
依頼人に訳を話すとすっかり意気投合し、中身を見てみることに。
錠前技師を呼びつけ、あーでもないこーでもないと言っている姿を、片付けそっちのけで二人は見つめていた。

もうダメかと諦めた矢先「ガチャ」という音がし、大の大人が大はしゃぎ。鬼が出るか仏が出るかという心持で引き出しを恐る恐る開けると、中からくたびれた巻物が出てきた。
「なんだ、ただの紙クズじゃないか」
鍵師、歴史に精通していたのか「これは明治初期の不動産に関する書物です」と答える。
「どう見ても、ただのゴミじゃないか」
「いいえ、我が国のホコリです」
「何がわかるって言うんです」

「はい、ここらのチリがわかります」
その他
公開:20/08/14 15:00
更新:20/08/13 01:09

まのじゅん( 神戸 )

まのじゅん/間野 純
神戸市在住の26歳
執筆は2020年春ごろから

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