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春の嵐による暴風で、この夜、この街は停電した。
「ちょっと懐中電灯取ってくるよ。」
パパが持ってきた懐中電灯は、ぴかーっと白く光ってまぶしかった。
「まっくらだし、今日は早く歯を磨いて寝ようね。」
ママの言う通り、ぼくはいつもより早い時間に自分の部屋に向かった。

部屋に入って驚いた。
真っ暗のはずのぼくの部屋が、柔らかなおひさま色の明かりを灯していたのだ。
明かりのもとをたどると、光を放っていたのはある一匹のテントウムシだった。
まるで小さな太陽みたいだ。
この街で唯一、ぼくの部屋だけがテントウムシの明かりで灯っていると思うと、それが嬉しくて誇らしくてたまらなかった。
この夜は、テントウムシと一緒に大好きな絵本を読んだり、集めている貝殻を眺めたりして、いつの間にか眠りに落ちた。

毎年、春一番が吹くと、幼心の懐かしさに明かりが灯ってはあの夜を思い出す。
その他
公開:20/08/03 14:37
更新:20/08/03 15:06

日常のソクラテス( 神奈川 )

空想競技コンテスト銅メダル『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞  『ダメ人間コンテスト』
ベルモニー Presents ショートショートコンテスト入賞 『縁茶』
X (twitter):望月滋斗 (@mochizuki_short)

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