点師(てんし)

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ある朝占い師は点の啓示を受けた。『すべてのものに「ヽ」を与えよ』
よっつの「ヽ」をいただいて占い師は点師になった。
点師はためしに包をもって「ヽ」をみっつ与えた。包は泡となり部屋中に広がった。
点師が外に出るとちょうど卯がはねてきた。はずみで「ヽ」を与えると、卵になって転がった。
里におりるとやまいに苦しむ子どものために、水を氷にかえてやった。飢えに苦しむ人のため、木を米にかえ配ってまわった。
点師の話は里に広がった。
ある男が十頭の牛をつれてきた。千頭の牛になった。
ウワサは王の耳にも届いた。
点師はいくさにつれて行かれ、天を矢にかえ王は勝った。つぎつぎといくさを仕掛ける王の欲望は止まらない。
ほとほと嫌気がさした点師は、ある日王に謁見し、王は玉になり転がった。
点師が外に出ると、うらみをもった人々に囲まれた。
点師は人に「ヽ」を与えると、人は火となり、人々は炎となり里は黒く燃えつきた。
ファンタジー
公開:20/08/03 11:09
更新:20/08/04 20:06
十枚の1万円札を千枚にしたい

工房ナカムラ( ちほう )

ボケ防止にショートショートを作ります

第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。

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