ポーの遺言

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「あの船の惨劇をもう知る人はいないだろう。」

潮風のようなリュート弦の切なげな震えにさざなみに似た吟遊詩人の声が重なる。

エドガー・アラン・ポーを知ってるか?
象が酔うほど酒を浴び
誰とも知れぬ服着て
四日寝たまま空に消えた
「哀しみからときはなて」
奇怪な暗号
彼の遺言示すのは
客船オーギュスト・デュパン
全てがこの船に
飲めや唄えや金銀が
波間に消えてしまわぬよう
上流の片手にシャンパン
雇われ者は遺産をめぐる
貴族は将棋(チェス)
政治家は碁(ドラフツ)
商人はポーカー
みな、夢の中

「くそっ」
「畜生」
「コラッ」

歪な輪舞曲(ロンド)終わらない。

ある奴ぁ煙突、詰め込まれ

ある奴ぁ宙舞い、逆さ吊り

ある奴ぁ粘土みたいに「ぺちゃんこ」さ

光る目、轟音
がらんどうの檻
あの咆哮を君も聞いたかい?


ーー唄はそこでおしまい。

その船の惨劇をもう知る人はいないだろう。
ミステリー・推理
公開:20/08/05 05:00
更新:20/08/04 13:16
エドガー・アラン・ポー ミステリモチーフ モルグ街の殺人 オーギュスト・デュパン

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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