乱歩洋燈(らんぽらんぷ)

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夕刊の見出しは【男性教諭殺害事件】
車窓を流す灰色の街並から探偵は目を落とす。少年が遺影を抱える写真はなんと物悲しい。

「わずか違えば、少年も救われたはずだのに‥」

ーー少年に希望は不要だった。
溶けた蝋の油臭さが鼻につく。父の折檻のたび蝋燭の火はゆるり影法師を作り、ぬらぬらと蠢く悪魔の所業を模写するようだ。それが終われば少年は蔵に数日閉じ込められた。闇。それだけあった。希望などまやかし。信ずるほど幼くはない。少年は痛みにただ喘いだ。
手にあたる何か。古びた洋燈(ランプ)であった。くるくると壁一面に影絵を見せた。破顔などいつぶりか。胸に熱を持った液体が流れ入るようだ。刺殺、斬殺、撲殺、殴殺、洋燈が影絵を描き、少年はその正体を悟った。影が少年の顔を真似たように歪んだ。
「そうか、希望とはこういう形をしてたのか」

洋燈は尚も回り続ける。

ーー探偵には新聞の少年がニタリと嗤って映る。
ミステリー・推理
公開:20/08/04 00:00
更新:20/08/03 23:03
江戸川乱歩 洋燈(ランプ) 雰囲気だけ笑 ミステリモチーフ 一番好き

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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