夏野菜の扉

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畑の野菜がムクムクと大きくなっていく。次々と花を咲かせては実をつける。
異様な事態に村人達も何事かと祭具が仕舞われた倉庫へと駆け込んでくる。
そして私が持つ銅鐸を見て、皆が溜息を吐いた。
私はただ、母みたく銅鐸を鳴らしてみたかっただけだ。それがこんな事になるなんて…
駆け付けた母は銅鐸を見ると「夏野菜の扉が開いている…」と呟いた。
「ごめんなさい!」
謝る私に母は「開いてしまったものは仕方ないわ。今から扉を閉める。儀式の準備を!」と村人に指示を出す。
「貴方も協力して頂戴」
母はそう言うと私に儀式用の巫女装束を着せた。
「この銅鐸にはね、夏の植物の強すぎる生命力が込められていたの。その生命力がないとこの村は冬を越せないわ」
息を詰まらせる私に母は微笑んだ。
「血は争えないわね…私も幼い頃、同じ事をやったもの。だから貴方も手伝って」
母に手を引かれ、私は儀式へと挑んだ。
公開:20/08/03 19:14
時代設定:弥生時代 続かない

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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