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鏡を見るのは昔から好きだった。
自分の顔ではなく、自分の目で見えるものを、鏡に映して見ることが好きだったのだ。
どんなものでも、鏡の中では綺麗に見える。
曇り空は銀色になるし、生ゴミでさえも鏡に映せば光さえ見える気がする。
美しくない世界に生きる中で、鏡の中の美しい世界を見るのが好きだった。
だから、自分自身は映したくない。
美しい世界に居る自分自身を見てしまうと、現実の自分が美しくない世界に生きていることを、改めて思い知ることになるから。

いつものように鏡に空を映していると、その鏡を落としてしまった。
割れなくてよかった。鏡を拾い上げたその時、
自分が、左手を出していることに気がついた。
ふと見上げた曇り空は、現実の色ではなく、鏡の中で見ていたように銀色に輝いている。
未だ左手に持たれたままの鏡を見る。
鏡の中の自分は、見たこともないほどの妖しい笑みを浮かべて、そのまま去っていった。
その他
公開:20/08/03 18:56

とこたコト( 愛媛県 )

物書き初心者です。一つずつ勉強していきます。
しばらくぶりでございました!この頃ずっと余裕が無い日々を送っておりましたが、どうにかこうにか戻って来ました(^_^;)
まだもう少しカメさん歩きになりそうですが、またまた頑張ります!
駄文ですが、どうぞ宜しくお願いします。

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