クリスティじゃあるまいし

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 切り立った崖上の古い洋館。海は荒れ、風が怪しく唸り、窓越しに稲妻が光る。屍と化したパワハラ上司の苦悶の表情を私は一瞥した。
 ため息混じりにハンカチで顔を拭く。洋館に来た日の夜に毒殺した営業課の元不倫相手からの貰い物だ。とはいえ返り血を拭うしか今では使い道はない。 
 そのクズ男を奪った経理の泥棒猫は不倫をネタに毒の調達を手伝わせた。愛した男を殺した毒で死ぬなんて悲劇的ね。ミステリ好きの社員旅行だか知らないけど、こんな所で殺されて本当お気の毒。毒殺だけに。ふふ。
 新人の子を殺す事なかったけど見られたし、広報のジジイは横領をネタに体を要求され仕方なかった。
 すでに通報はした。後はナイフで被害を工作しなきゃね。自分で刺して死ぬなんてマヌケはナシ。クリスティじゃあるまいし「そして誰もいなくなった」冗談じゃない。ナイフは海に捨てた。計画は完璧だったはずなのに。

ナイフに毒を塗ったのは誰?
ミステリー・推理
公開:20/08/01 06:00
更新:20/07/31 23:52
ミステリモチーフ アガサ・クリスティ

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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