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「ご隠居の調子が悪いって」いつになく深刻な顔で妻が言った。
「ヒロの進学の相談したかったのに」
「そういえば最近行ってなかったな」
「体の方が悪いって、裏のタナカさんが。なんで今」
「ヒロの担任は頼りないからなぁ」
というよりご隠居がスーパー過ぎるのだ。
夫婦喧嘩の仲裁から夜泣きの止め方、果ては自営の自転車屋の資金繰りまで、ご隠居にできぬ相談はないのではないか。

玄関先を掃いていると向かいのオダさんが青い顔をして立っていた。首を伸ばして、ご隠居の所を見ている。オダさんは涙ぐんでいる。
「おかしいですか、泣いたりして。私ゃね、ご隠居にはもうチビ助のときからお世話になってて」
白いトラックが見えた。新しいご隠居を乗せてきたのだろう。「接続OKです」そんな会話が聞こえた。

A-38地区の管理ロボ通称『ご隠居』の本体が破損したため、入れ替え作業が行われた。立ち合った町内会長がハンコをついた。
SF
公開:20/07/31 22:55
デストピア?

工房ナカムラ( ちほう )

ボケ防止にショートショートを作ります

第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。

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