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「いいか? よく聞けよ。現実の世界で金品を盗むより、もっと楽な方法がある。それはなぁ――」

窃盗団のボスが見習いに、窃盗のイロハを教え込んでいる。

「どんな方法でしょう?」
「羽振りのいい夢の中に侵入して、金品をかっさらってくるのさ」
「なるほど! 夢ですね!」見習いは目を輝かせた。

いい夢を見ている人間は無防備だ。現実とはかけ離れた世界に浸り、うつつを抜かしている。

「そんな連中から、サッと盗んでくるのさ」

それなら自分にもできそうだと、見習いは鼻息を荒くした。

「まぁ、たまに侵入したのが悪夢のときもある。そんなときは、命からがら逃げなきゃならんがな」と、ボスは笑った。


数日後、窃盗から戻った見習いはボスに報告した。

「眠ってるヤツの夢の中に侵入してみたのですが……見渡す限り真っ白な世界でして」
「バカヤロウ! そいつは眠ってるんじゃなくて――」
ミステリー・推理
公開:20/08/02 18:34
窃盗

ときわひでたか(常盤 英孝)( 大阪 )

《3分後にはもう、別世界。》
ショートショートを執筆する、超短編小説家。

ショートショートの魅力である驚き・衝撃・裏切り・どんでん返しの展開を楽しんでいただければ幸いです。

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