ヨケル

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これは僕のための競技だ。初めてヨケルを見た時、運命を感じた。
ヨケルは文字通り障害物を避ける競技だ。ショートプログラムでは乱れ飛ぶ球を、フリープログラムでは時に群れ、時にてんでバラバラに動き回るヒトを避ける。技術点の他に、どう美しく避けるかも得点となる。避けきれずぶつかったり、転んだりすると減点だ。ジャンプやダンスを交えた避けはもちろん、華やかな衣装も競技の魅力となっている。
「避けられるぐらいなら自ら避けてやるさ」それがヨケルを始めた理由だ。僕は寝癖の様にも見える長い触角を揺らした。この競技で僕が頂点に立てたのは、皮肉にもこの触角のセンサーのお陰。見た目が違うだけで皆に避けられてきたのに。
曲が始まると艶やかな花の衣装を纏ったヒトが一斉に縦横無人に駆け回る。黒一色の衣装を纏った僕は昆虫の素早さでかわす。
フィニッシュ。大きな拍手。チームの仲間が手を広げて待っていた。
僕はもう、避けない。
その他
公開:20/08/02 11:11
更新:20/09/03 16:19
空想競技

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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