天国の遺失物係

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ここは天国、雲の片隅にあるのは遺失物係の詰所である。
今日も昇天した魂たちが、生前に大切だった思い出の品を求めてやって来る。
「ああ!これは私の大事な大事なジュリアーノ!この子がいないと何も手がつかなくって…」
老婆が泣きながら手にしたのは、白猫の剥製。こんな物まで置いてある詰所は結構、すごい所だと思う。詰所の前は、連日死者の行列でひっきりなし。忙しい遺失物係だって、たまには休みたい日もあった。そういう時はこっそり雲の上でゴロゴロ眠っているそうだ。ただ、彼にも悩みがある。消えた品が届けられない死者たちが詰所の前で待ちぼうけを食らっていたのだ。ある女の子は、大切にしていたオルゴールがいつまで経っても届けられずにいる。単に神様が怠惰なのか?生前の行いに問題があったのかは、定かでない。遺失物係は今日も列に並ぶ人々に、思い出の品を手渡していた。それが届く、届かずに関わらず優しげなスマイルを見せて。
ファンタジー
公開:20/08/02 06:00
更新:21/02/27 22:11

水鏡かけら( 日本 )

執筆のリハビリがてらに、書いております。
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