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折れたページの角を開くと、つんとニッキの匂いがした。
タイムカプセルみたい。小学5年の夏休み、嫌いだった宿題の日記。
「1日書いたら1個やる」
全部で40個。好きだった駄菓子屋のニッキ飴。
「翔兄ちゃんのケチ。そんなの子供のお駄賃じゃない」
「飴とムチ。食い物につられる時点でガキだろ」
1ページと引き換えで、手のひらに1個の日記飴。
もらえたのは、結局39個だった。
「まだ持ってたのか、それ」
クラフト紙みたいな指。関節の皴は、触ると少しざらざらする。
「根に持ってるの。1個足らないから」
「別のをやったろ。いい加減水に流せよ」
「あれは盗られたって言うの。お茶『で』濁さないで」
特製のミルクティーは、ほわんとシナモンの匂いがする。
「遥が『兄ちゃん』やめるまで、次はおあずけ」
かすれた鉛筆の相合傘。開くのに七年かかった。
駄菓子屋の翔さん。うんと背伸びしなくても、届く距離に追い付いた。
タイムカプセルみたい。小学5年の夏休み、嫌いだった宿題の日記。
「1日書いたら1個やる」
全部で40個。好きだった駄菓子屋のニッキ飴。
「翔兄ちゃんのケチ。そんなの子供のお駄賃じゃない」
「飴とムチ。食い物につられる時点でガキだろ」
1ページと引き換えで、手のひらに1個の日記飴。
もらえたのは、結局39個だった。
「まだ持ってたのか、それ」
クラフト紙みたいな指。関節の皴は、触ると少しざらざらする。
「根に持ってるの。1個足らないから」
「別のをやったろ。いい加減水に流せよ」
「あれは盗られたって言うの。お茶『で』濁さないで」
特製のミルクティーは、ほわんとシナモンの匂いがする。
「遥が『兄ちゃん』やめるまで、次はおあずけ」
かすれた鉛筆の相合傘。開くのに七年かかった。
駄菓子屋の翔さん。うんと背伸びしなくても、届く距離に追い付いた。
青春
公開:20/07/31 11:10
豆知識。
ニッキとシナモンは、
厳密には別物。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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