『被る天気』

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地球上の秩序は少しずつ乱れ、四季のある地域ではその境目が滲みつつあった。夏なのに風が冷たいとか、冬なのに蒸し暑いとか、ハイテク時代に天気は不便なものとして残っていた。
そこに目をつけていた、とある科学製作会社では『被る天気』というものを開発、販売した。
桃の缶詰程の大きさでプルトップ式。開封すると、揮発と共に人一人分の透明なアーチが頭上に浮かび、購入した天気によってアーチから得られる内容が変わる。開発部では『快晴』が人気と読むも、景色が溶けそうなくらい暑い日は『霧雨』の品切れが続いた。

銀座に店舗を構え、発売当初は行列もあったが「気分に合わせてすぐに欲しいのに、わざわざ店に買いに行くのは不便だ」という声が殺到し、ボタンひとつで購入できる自動販売機として全国展開すると売り上げは三倍に跳ねた。

今では『ブリザード』や『砂塵嵐』など、希少なご当地天気もあるが、こちらは在庫が余っているという。
ファンタジー
公開:20/07/31 09:10

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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