想いを紅に閉じ込めて

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久しぶりにマニキュアを塗ってみる。
今はいろんな色があるけれど、特別な今日は古風な赤でと決めている。
やすりで爪の形を整えているうちに、様々な想いが絡み合って浮かんできた。
楽しかった…最初のうちは。マニキュアなんてしなくても、ごく自然にあなたは私の手を握ってくれた。
でもいつのまにか、あなたの気持ちは私から遠ざかる。どんなに綺麗にしても、どんなに笑いかけても、あなたはもう、私の手に触れることすらしなくなった。
嘆く私の耳に、他の誰かがいると後になって入る噂話。

…ああ、上手く塗れない。やっぱり久しぶりだからかしらと思いかけて気がついた。手先に脂がついていて、弾かれてしまうのだ。舌先で軽く舐めて、指の腹でそっと拭う。
―今度は大丈夫。私は安堵の笑みを浮かべた。
せっかくなんだもの、とびきり綺麗に仕上げたい。
私は傍に横たわる彼の身体から流れ出る紅を化粧筆に含ませ、そっと爪の上に走らせた。
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公開:20/07/31 08:16
更新:20/07/31 18:34
マニキュア ネイル なかなか手間がかかります

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました。
現在はnote・TALES・エブリスタなどで活動中。
2026年4月7日に『栗は月色、こがね色 和菓子処長月堂』(朝日文庫)で商業デビュー。

【刊行】
・栗は月色、こがね色 和菓子処長月堂(朝日文庫)
・第31回やまなし文学賞受賞作品集(山梨日日新聞社)

【活動歴】
・第2回 日本おいしい小説大賞 最終候補(小学館)
・第31回やまなし文学賞 佳作『雨を知るもの』→書籍化
・創作大賞2025 入選 『栗と牡丹』→書籍化
・SSアンソロジー『ベリショーズ』寄稿
・ホラーアンソロジー『ウタ・カタ』寄稿

【note】
 https://note.com/akishiba_note

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