パイロケーション

12
7

「景色を焼こうか」
ケーキを焼こうか。みたいなノリで、台所の彼が腕まくりした。
「け、景色を、焼く?」
何その物騒な形容。アタシの彼氏、まさかの放火犯!?
「昨日買い物がてら、ロケハンしてきた。良い感じに焼けると思うよ」
「ダメダメ、焼いちゃダメ~!!」
「……ごめん。もしかして、パイ苦手?」
冷蔵庫を開けた手に、パック入りのパイシート。
「熱転写のパイロケシート。入力した景色が、食べると再生出来るやつ」

あぁ、そっか。
付き合って一年。旅行行きたいねって。キャンペーン始まるからって。
――でも。
やっぱりよそうって。思いきり楽しめる様になってからって、いつかも判らない今度の約束をした。

「近所で悪いけど。昨日久々に晴れたろ。すごい綺麗な夕焼けだった」
「うん。……一緒に見よ」
うっすら卵色のパイシートが、こんがりきつね色に焼けたら。
二人並んで夕焼けを食べ歩き。最高の旅行だと思った。
ファンタジー
公開:20/07/31 22:05
パイ パイロキネシス バイロケーション

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO

ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容