誰そ彼高跳(たそかれたかとび)

17
11

走高跳決勝、勝ち抜いた四選手が日没直後の競技場に並ぶ。
今日彼らが跳び越えるのはバーではなく、西の空に出来た赤と藍の境界線。故に黄昏高跳とも呼ばれている。
成功者が出ない場合は最も高く跳んだ者が優勝となるが、今年2020年は三大会ぶりの成功に期待がかかる。

「武も駄目か…やはりあれだけの高さとなると助走の仕方とか、そんなレベルではないな、浩」
「いや俺が武。今跳んだのが浩。やはりこの位暗くなると、人の顔がわかりずらいな。それより最後は奴の番だぞ」
「おお、たぶん奴なら跳び越えられるんじゃ……いった!」
「流石!見事なクリアランス!」
「ああ、奴は凄い……でも奴って…?」
「誰だっけ?」

誰も思い出せなくなるのだ。 
いや、思い出そうとすればその者の名前や顔が、まるで黄昏時の様に判別出来なくなる。
何より当人が、藍色の空へと跳躍したあと戻ってこない。

だから表彰台にも二人しか登らない。
ホラー
公開:20/07/29 21:45
更新:20/07/31 11:27
空想競技

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容