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歳のせいか体が上手く動かなくなってきた。寝たきりで家族に迷惑をかけている事を自覚した儂は樹術師を呼んだ。
「貴方は樹になる事を選んだ。間違いありませんね?」
静かに頷く。家族は複雑な表情で儂を見る。
申し訳なさと、介護から解放される喜びとが綯交ぜになっている。
儂はオーク木のような手で孫を撫でる。そして、息子夫婦に言った。
「偶には会いに来てくれ。そうでないと寂しくて枯れてしまうからな」
儂の言葉に家族が泣いた。こんな儂の為に泣いてくれるとは本当にありがたい。

数日後、儂は集合森林にいた。
「では、始めます」
樹術師が呪文を唱えると儂の足から根が生え、地面にどっしりと根付いていく。
節くれ立った指が枝となり、頭がぐんぐんと延びていく。
「術式完了です」
儂は完全な樹となった。

「この樹は儂のお爺ちゃんなんだ」
歳を取った孫が玄孫を連れ、今も儂に会いに来てくれる。
樹になるのも悪くない。
ファンタジー
公開:20/07/29 19:21

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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