きりたっぷ

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もう何十年も犯罪の発生がない伊豆半島の東端の町に私は駐在として赴任した。平和を好む私はこの地での勤務をずっと希望していた。念願叶い赴任した翌日、その監禁事件はおきた。
北海道から来たという霧多布早苗は町の夏祭りに参加して、地元の男を泥酔させ、あらかじめ用意していた霧多布産の昆布で男を包み、車のトランクに監禁した。
「角を取っただけ」
と彼女は人助けを主張した。
「最近イラついている夫が心配だからって奥さんに頼まれたのよ。昆布〆にしてほしいって」
「酒を飲ませただろ」
「その方が昆布がなじむから」
捜査を進めるうちに被害者の男が最近苛立っていた理由がわかってきた。この辺りの土地には元々昆布が敷きつめてあって、それが平和をもたらしてきたが、フィリピン海プレートが北米プレートに潜りこむことで、その昆布がずれて住民に影響が出てきたらしい。
私は霧多布早苗を釈放し、町民たちとずれた昆布をひっぱった。
公開:20/07/29 14:44

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