手がはえる

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会社の先輩に面白い物が売っているという店に連れかれた。興味津々で物色する俺を見て先輩は満足げだった。
「光る蛙の卵? はは、何ですかね」
「それ、蛙の卵に似せた照明だよ。ほら、クリスマスツリーに飾るやつ」
そんな悪趣味なクリスマスツリーを見たことがない。
「へえ、ファンタジーっぽいですね」
缶を棚に戻すと、回りを見渡す。店自体がファンタジーの世界に出てくる店みたいだ。
「おっと」
先輩が何かに躓いて、照れ笑いする。
「そんなにお酒飲みましたか? 先輩、目が三つあります」
「ははは、お前こそ飲みすぎだ」
「ですよね、そろそろ出ましょうか」
そう言って、何も買わずに店を出た。

「え、何だこれ」
テーブルの上には缶切りと開いた缶詰。手のイラストと爪に挟まった土を交互に見る。
「ん? 何か埋めたのか、俺」
カーテンに小さな鉢植えとピースマークの影が映る。
ファンタジー
公開:20/07/29 14:04
ファンタジー?

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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