292. 雨のコーヒー(続き)

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「お客さん、どうしてこの喫茶店へ入ろうと思ったんですか?」
店主はカップを布巾で拭きながら私に聞いてきた。
「お店の看板の文字が何となく気になって…。高校時代のクラスメイトが書いていた字に似ているような気がして」
そう言うと、私は店名が印刷されているナプキンを指した。
「僕が度々ノートを貸してたこと覚えてたんだ?」
驚いて顔を上げると、店主は口元の髭を手で隠して笑った。
「あっもしかして佐藤くん!?」
「やっと気が付いてくれたね。君はあの頃と殆ど変わってないから僕は直ぐに気が付いたよ。この店も君の名字の雨宮から想起して付けたんだ」
「そうだったの…。どうりで優しい味がすると思った」
「このコーヒーは僕が傘を忘れた日の帰り道、キミが傘に入れてくれたあの夕立の雨粒を使って淹れたものだから」
「え、まさか…」
「あの時僕の肩についてた雨粒を帰宅して直ぐに保管していてね。キミにまた会えて嬉しいよ」
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公開:20/07/30 17:09
更新:20/08/01 23:17
創作ドリル ストーリー13 雨のコーヒー

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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