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就職先が決まり、大学卒業と同時に上京した。
実家を離れるとき、一人娘の旅立ちにお父さんはとても寂しそうだったが、『東京でも頑張れよ』と言って送り出してくれた。
しかし現在、私は満員電車や慣れないデスクワーク、残業に明け暮れ、コンクリートジャングルの中で身も心も疲れきっている。それでも来る日も来る日も頑張ってきた。
でも、もう限界だ。

有給休暇を取り、数日実家に帰ることにした。
田舎の澄んだ空気、馴染みある実家の匂い、飼っていた猫、母の味、何気ない家族の会話。
全ての再会が、疲弊して乾ききった私の心に潤いを与えてくれた。

この数日で少しだけ元気になった。でももう東京へ戻らなくちゃ。
「じゃあ、行くね。」
そう言って、玄関で見送る両親に小さく手を振ると、お父さんが言った。

『あんま頑張るなよ。』

私はコクリと頷いてから、両親を背にして家を出た。
夕方にしては、外はまだだいぶ明るかった。
その他
公開:20/07/30 15:33

日常のソクラテス( 神奈川 )

19歳男子大学生です。
ショートショートの自由でちょっぴり不思議な世界観に惹かれ、自分も書いてみたいと思うようになりました!
主に恋愛、青春、ファンタジー、日常系を中心に書いています。
まだまだ勉強中です!ぜひコメントいただけたら嬉しいです!
空想競技コンテスト銅メダル『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞  『ダメ人間コンテスト』
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最近は少し長めのお話を書いているので更新少なめです^^

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