映画のシーンのように

「バカヤロー！」
映画のシーンのように僕は海に向かって叫ぶ。沈みゆく夕陽にどうしても勝てないアイツが重なる。

映画のシーンのように僕は波打ち際を全力で走る。
「ふふふん。」
「誰だ！」
振り向いても砂の上にはヨタヨタした足あと、波がそれを消すように打ち寄せているだけ。
自分はこの足あとのようにアイツの後をついていくだけなのか…そしていつか消えていくんだな…
「こんちくしょう！」
僕は波を蹴散らした…
すると突然、足あとが僕を追い越して走り始めた。
「おい！ちょっと待て！」
「嫌だよーだ！」
逃げていく足あとを追いかけるのに疲れて周りを見回すと、遥か遠くの方でも誰かが足あとを追いかけ走り回っているのが見えた。

動画を投稿したら映画化と主演の話が舞い込んだ。
チャンスだ！
けど、逃げ出した僕の足あとはまだ見つからない。
なので僕は今、新しい足あとを作り始めている。
1歩1歩踏みしめながら。