睡蓮と月
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新月の夜だった。
昼間の雨を浴びた芝を踏みつけるたび、緑の香りが立ち込める。水の中に似た静けさに包まれ、そこにある闇は足が地面に沈んでいくような不安を覚えさせる。
友人が亡くなって、悲しみを消化できずに歩き出したのはもう十日も前になる。なぜ彼が亡くなったのか理解できず、何かしていないとブラックホールに放り込まれて帰って来れなくなるような恐ろしさを抱えていた。
そろそろ答えを出さなくては。
うつらうつらと世界の片隅で揺られながら空を睨む。なぜか満月の姿があった。
新月のはずなのに…と、不思議に見つめると、月はほろほろと散り、近くの池に落ちていく。
月の欠片は水面で睡蓮の花に姿を変えた。睡蓮の花は彼が愛した花だ。触れようと手を伸ばすと、それは蝶の化身であった。蝶は私の手をすり抜け、踊るように飛んでいく。
私はもう二度と彼を見失わないよう、ふたたび歩き出す為に彼を想ってはじめて泣いた。
昼間の雨を浴びた芝を踏みつけるたび、緑の香りが立ち込める。水の中に似た静けさに包まれ、そこにある闇は足が地面に沈んでいくような不安を覚えさせる。
友人が亡くなって、悲しみを消化できずに歩き出したのはもう十日も前になる。なぜ彼が亡くなったのか理解できず、何かしていないとブラックホールに放り込まれて帰って来れなくなるような恐ろしさを抱えていた。
そろそろ答えを出さなくては。
うつらうつらと世界の片隅で揺られながら空を睨む。なぜか満月の姿があった。
新月のはずなのに…と、不思議に見つめると、月はほろほろと散り、近くの池に落ちていく。
月の欠片は水面で睡蓮の花に姿を変えた。睡蓮の花は彼が愛した花だ。触れようと手を伸ばすと、それは蝶の化身であった。蝶は私の手をすり抜け、踊るように飛んでいく。
私はもう二度と彼を見失わないよう、ふたたび歩き出す為に彼を想ってはじめて泣いた。
ファンタジー
公開:20/07/30 08:46
ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。
よろしくお願いします。
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