目覚めて、はやく

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衝撃的なプロポーズだった。私が「時間です」と声をかけた時には、もう彼は立ち上がり頭を下げていた。「私と世界を獲りましょう!」と右手を差し出して…。

あの通報騒ぎから8年。私たちはいま、世界一を決める舞台にいる。

ベッドフラッグスは、眠りからいち早く覚めて、50m先にある旗を奪い合う競技だ。私はヘッドスパで鍛え上げた手技で、すでに相手を深く眠らせている。旗を挟んだ反対側では、彼もすやすや寝息を立てている。

眠りが浅ければ有利なわけじゃない。世界レベルの施術にかかれば、普段眠れない人ほど起きられないもの。その点、彼は正反対だった。眠りの底に急降下したかと思えば、とてつもないスピードで浮上する。

つまりはガキだった。いつしかそこに惹かれていた。約束どおり優勝したら、今度は私から言おう。

会場に目覚ましが鳴り響く。とたんに開いた彼の目が光る。覚醒は明らか。さあ、奪いに来て。金色の未来を。
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公開:20/07/29 22:42
更新:20/09/05 22:40

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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