ごく薄い巨人

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「新幹線って曲がって走ってるんだよ。だから二回富士山が見えて、しかも逆側から見えるの。」
 彼女の賢しらな言い方、今でも思い出せる。すぐ目の前にいるみたいだ。今、この瞬間も彼女は誰かに何かを教えてあげてるんじゃないか。

新幹線はとうに無くなって、飛行機がその代わりをしている。地上を走る長距離移動手段はもう使いようがない。特に線路なんて、電車なんて、決まった時間にここに何かきますよと教えているようなものじゃないか。パラダイムシフトだ。飛行機だって乱数時刻表で飛ぶ。でも、飛行機だってすぐに役立たずになるだろう。パラダイムシフトだ。

科学者になった彼女が、世界を跨げるドアを作ってくれたらしい。まだ実験段階で、人は通れないらしいけど。それまではこうやって飛行機で、富士山があったところにいる巨人を見ているだろう。正面からはほとんど見えない化け物の横顔が見えている隙に。
SF
公開:20/07/28 18:25

スイングラオス

小説を書く練習をしています。
 

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