オールドバックスキッパー

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 トラックに一礼しスターティングウォールを調整する。最近の選手はみな、ハンドバーを低く設置し、テーパーをきつくする。そこに並ぶと俺はほとんど棒立ちみたいだ。
 筋肉で体を抑え、低空を早いピッチで進むのが最近の流行さ。昔ながらのシャッフル式じゃ、もう勝てねぇのかもな。
(オンユアマーク)
 だがな。俺はいつだってコースの全員を視界に収めてゴールする瞬間しかイメージしてねぇよ。
(セット)
 目の前の全てを何一つ捨てることなく、スキップしながら、未来へ戻っていく。それがバックスキップさ。
(BANG!)
右足でテーパーを蹴って右足で着地したら、すぐさま地球を前へ転がし、推進力が失われるのと同時に左足で着地。だが、そこで少しだけ余力を残して高く跳ぶのが俺流だ。
 視界から選手が消えていく。畜生。奴らの顔が目に浮かぶぜ。
 俺? 俺はいつだって笑ってるさ。だってスキップってさ、そういうもんだろ?
その他
公開:20/07/28 16:29

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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