旅果て

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船が完成した。
それもただの船ではない。宇宙船だ。自由に宇宙を旅する事が出来る代物だ。
早速私はこれに乗り、一人で出掛ける事にした。
轟音と莫大な量の白煙を伴い、宇宙へと飛び出した。
なるほど、ガガーリンの言葉は間違ってなかったらしい。バックミラーが物語っている。
私は速度を上げた。既に我が故郷は豆粒ほどの大きさにまでなってしまった。
私はこのまま、宇宙の果てを目指す。そして、そこを眺めながら、持ってきたインスタント・コーヒーを啜り、静かに死を待つ。それこそ私の求めていた人生であり、散りようだ。

見た事もない珍妙な星々を通り抜け、遂に私は辿り着いた。「果て」だ。
しかし、驚いた事にすぐ近くに我が故郷が見えた。少し近付くと、やはりそうだ。間違いようもない、地球だ。
何故だろう、私は疑問を抱いた。
同時に私は一つの「」を理解し、コーヒーを啜る間もなく絶命した。
神様は随分と、秘密主義らしい。
SF
公開:20/07/28 09:52
更新:20/07/28 10:37

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