カッペリーニの夢

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出港してからもうどれだけの月日が過ぎただろう。
地球最大の宇宙空母カッペリーニの甲板には広大なトマト畑がある。私と夏子は収穫を終えるとそのまま夜の警備についた。海鳥や海賊からこの畑を守るために。
空母は宇宙に向けて飛ぶために大西洋上を疾走している。
私たち乗組員は銀河系トマト祭りの地球代表として、完熟トマトを開催空間に運ぶ任務がある。
「あ、うわぁ…」
甲板に漏れる船長の嘆きは乗組員の落胆に変わる。またダメだったか。この空母は加速が弱く、もう何度も飛ぶことに失敗しては仕切り直しの世界一周を繰り返している。
それでも私たちは飛ぶことを諦めない。人類がトマト祭りに参加したいと願うのは、美しい夕焼けを手伝いたいからだ。
夏子は言った。遠い星の光が何年もかけて地球に届くように、茜色の夕焼けはきっといつかのトマト祭り。参加したいじゃない。
私は夏子の言葉に夢をみた。人類の夢はそうしてはじまったんだ。
公開:20/07/28 09:13
更新:20/07/28 09:16

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