アルチンボルドの誘惑

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果物や植物を用いて独特な肖像画を描く画家、アルチンボルド展の館内は冷蔵庫並みに冷えていた。
それでもアルチンボルドメーカーというものが気になり、寒さに耐えて並ぶ。どうやら額縁の中に映る顔を野菜で再現してくれ、来場者も作品の一部になれるようだ。
ボコボコと腫れた奇怪な顔をスマホに収めて眺めているうちに、自分の顔は近所のスーパーで売っている野菜で完成するのだと分かり購入して帰宅する。
接着剤を使いパーツを固定すると、愛嬌のある顔に心奪われ、俺とそいつの奇妙な同居生活は始まった。

数週間後、そいつは傷むどころか艶を増して水々しいままなのに対し、俺は痒くて掻きむしった顔面がパンパンに腫れ、ベッドから起き上がる気力を失っていた。

病院へ行こう。そう決めた翌日、俺の顔は元通りに治っていた。
だが、何かがおかしい。
俺はベッドで寝ている俺を見ていたのだ。
愛嬌のある、あいつが置いてあった場所から…。
ホラー
公開:20/07/28 08:57

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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