微睡みの半夏生

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冬の空気が『鋭く尖って肌を刺す』のであれば、梅雨時のそれは柔らかな綿のように私たちの頬を包んでいくようなものである。


雨の音に誘われて目を覚ます。包むような眠気にあくびを零せば、膝の上で丸くなっていた狐の子も、あくびを一つ。湿気を含み膨らんだ尻尾に顔を埋めれば「ん」と不機嫌そうな声が降る。

妖狐である彼女は尻尾に触れられることをとても嫌う。でも抗えない感触にもう一度顔を埋めれば、尻尾で頬を叩かれてしまった。

しかし微睡みの中、柔らかな衝撃が頬を打ったところで放す気にはなれずーー私は彼女を抱いたまま、そのまま床に転がる。彼女はしばらく暴れたあと、諦めたようにため息をひとつ、そのまま私の隣で丸まってあくびをひとつ。

網戸から柔らかな風。カーテンが揺れる。雨音が響く。
森羅万象、昼寝を勧めてくるような午後に絆されあくびをひとつ。追いかけるようにもうひとつ、あくびをする音が耳朶を打った。
ファンタジー
公開:20/07/28 01:06

chaccororo

めっちゃトイレ行きたい時間と、そうでもない時間を行き来してます。

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