別れの指輪
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男はいつものように海辺へとやって来ていた。
恋に落ちた人魚と別れるために。
「やあ、今日も会いに来たよ」
「私は海から出られないから……。いつもありがとう」
人間と人魚との恋は許されない。
人魚も当然それを理解しており、別れが近いことも直感していた。
「プレゼントを持って来たんだ」
男はそう言うと、ステンレス製の容器から指輪を取り出した。
「これは?」
「指輪っていうんだ」
「へぇ。この輪っかについている透明な石、綺麗だわ」
男は返事をせず、人魚の薬指に指輪をはめた。
「大事にするわ」
「ああ。それじゃあ、来たばかりだけど今日は帰るよ」
男は足早に去って行った。
人魚はその背中を目に焼き付けると、海の中へと飛び込んだ。
沖の方へと、深いところへと泳いでゆく。
人魚がふと指輪に目をやると、先ほどまであった透明な石、氷が溶けてなくなっていた。
日差しが強い夏の日の午後だった。
恋に落ちた人魚と別れるために。
「やあ、今日も会いに来たよ」
「私は海から出られないから……。いつもありがとう」
人間と人魚との恋は許されない。
人魚も当然それを理解しており、別れが近いことも直感していた。
「プレゼントを持って来たんだ」
男はそう言うと、ステンレス製の容器から指輪を取り出した。
「これは?」
「指輪っていうんだ」
「へぇ。この輪っかについている透明な石、綺麗だわ」
男は返事をせず、人魚の薬指に指輪をはめた。
「大事にするわ」
「ああ。それじゃあ、来たばかりだけど今日は帰るよ」
男は足早に去って行った。
人魚はその背中を目に焼き付けると、海の中へと飛び込んだ。
沖の方へと、深いところへと泳いでゆく。
人魚がふと指輪に目をやると、先ほどまであった透明な石、氷が溶けてなくなっていた。
日差しが強い夏の日の午後だった。
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公開:20/07/29 00:50
ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
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