令和美人

「令和は遠くなりにけり、か」
俺はステージを眺めながら呟いた。
令和末期を描いた映画のクライマックスのシーンで、ミスコンを入れようと言いだしたのは誰だったか。再現された決勝のステージに出場者役たちが笑顔で現れた。
「そもそもなんでミスコンだよ、令和末期だぜ」
俺はぼやいた。
「ほぼやってなかったですから、再現するの大変だったでしょ」
「まぁな、仕方ないから昭和と平成の資料も使った」
「美に順位づけなんておかしくないですか？」
「昔のことさ。だが、考証担当のおかげで、当時の美的感覚は再現できたと思うよ。大衆が愛好した絵画を元にしているらしい」
「ああ、あの絵ですね。あれだけいろいろなところで使われているんだから、あれが令和のスタンダードってことですか」
「このステージに立っているのは言うなれば『令和美人』てやつだな」

ステージ上の出場者たちは、どこか『いらすとやさん』の描く人物に似ていた。