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メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王を除かねばならぬとイキってはみたものの、あっさり巡回の兵士に捕縛された。

メロスは頭が悪く、とにかく忘れっぽい。
よく覚えていないが、なんだかんだあって解放されたメロスは、妹の結婚式に出席すべく故郷へ向かった。

どういうわけか、友のセリヌンティウスが十字架にかけられ、こちらを見て不満そうに喚いていた。まったく騒がしい男である。

道中、故郷に帰る理由を忘れてしまったので、王の待つ城へ引き返す。
川の氾濫と山賊に襲われたが、「信用できるのは己が筋肉のみ」が口癖だったメロスにとっては何でもなかった。
地を蹴り川を越え、瞬く間に山賊の死体を積み上げた。
メロスが走り空を切れば大きな竜巻が発生し、国は風害に悩まされるようになった。

「頼むから歩いてくれメロス」
過剰に肥大した筋肉で耳の穴が塞がっていたメロスに、最早王の叫びは届かなかった。
その他
公開:20/07/26 19:52
更新:20/07/27 13:58

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