サメごっこ(つづき)

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しかし、プールサイドにつく前に、ぼくは三人に追いつかれた。
「おい! 冗談はやめろって!」
ぼくはみんなに向かって口にしたが、もぐったままでだれも顔を出してくれない。それどころか、三人はぼくを取り囲み、背ビレを出してぐるぐると周りをまわりはじめた。
そして、三人がぼくに襲いかかってきたその瞬間だ。
ぼくの体はみるみるうちに大きくなり、地球上で一番大きいとされているシロナガスクジラに変身した。
ぼくはあっという間に三人を丸のみにしてから悠然と海深くもぐり――。

やがて、あたりは静かになった。
プールの水は、何事もなかったかのようにもとの透明な色になり、ぼくも人間の姿に戻っていた。ただ、三人とサメごっこをして追いかけられていたところまでしか記憶が残っていなかった。
いったい三人はどこにいったのだろう? ぼくは周りを見渡した。
その後、いくらプールを探しても三人を見つけることはできなかった。
ホラー
公開:20/07/26 07:00
『とってもふしぎな創作ドリル』 「ストーリー12 サメごっこ」 プールサイド 三人 背ビレ シロナガスクジラ プール 人間

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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