KARIMONO

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「エマ、君に言わなきゃいけないことがある」
僕はソファで恋人に告げた。

「実は僕……借り物競争日本代表なんだ」
「え、あの三年前の?」
エマが目を丸くして言う。僕は黙って頷く。

借り物競争が他の競技と違うのは、大会終了がそのスタートであるという点だ。四年後の次の大会までにお題に沿ったものを世界中から探し出し、会場に持参しなければならない。求められるのはスピードではなく、お題に対する適合性と審査員の心を掴むエピソードだ。

「僕は、君にする」
お題の紙を見せると、エマはまた目を丸くした。
「嬉しい……でも、私でいいの?」
「もちろんだ、愛してる」
エマは『最愛の人』と書かれた紙をじっと見つめていた。


(……最初からわかってた。だからあなたに近づいた。足止めして時間を稼ぐ作戦だった。でも、今は……)
私は憂いに満ちた表情で彼のことを思った。

借り物競争アメリカ代表である、弟のことを。
その他
公開:20/07/26 03:05
更新:20/07/27 00:32
空想競技

makihide00( 鳥取→東京→福岡 )

30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。

長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。

Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00

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