魔法使いの風船バレー

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魔法というものを見たのは小学校に上がった年。
叱られて泣いていた私に祖母が風船バレーを見せてくれたのだ。
「お婆ちゃんがデイサービスでやってるやつ?」
「あれはあたしらが風船でバレーをする方の風船バレー。これは風船がバレーをする方の風船バレーさ」
そう言うと祖母は、動物型の風船に次々と息を吹き込んでいった。
「お婆ちゃん凄い…一遍に出来た」
「そりゃ、あたしゃ大魔法使いだったからね」
あっさり正体を明かした祖母は、最後に紙風船を膨らませて宙に放った。すると、兎や熊がフワフワと動きながら紙風船を打ち上げ始めた。
それは文字通り、大魔法使いの“息がかかった”風船によるバレー大会だった。

葬儀が終わると私は動物達を納戸から出した。また泣いている私に、祖母が最後の魔法を見せてくれる気がしたからだ。
やがてカーテンが揺れ縁側から優しい風が吹き込むと、動物達は次々と膨らみ、最後に紙風船が宙を舞った。
ファンタジー
公開:20/07/25 23:39
更新:20/07/26 08:59
空想競技

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