資源ゴミクライミング

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「国民が一丸となって海、山、川等から集めてきたゴミがこうして生まれ変わりました」
司会が感極まった声で、手を上げた。それを合図にオーケストラの演奏が始まり、シートが取り払われ巨大な壁が沢山のライトに照らされた。拍手と歓喜の声が競技場に響き渡る。
「モニターをご覧下さい」
アスリート達自らが漂流物のガラス瓶やシーグラス、流木などを加工してクライミングの壁に埋め込んでいく様子に国民は拍手を惜しまなかった。皆、泥まみれだったが、そこに国境は無く参加者は笑顔に溢れていた。
「それでは、クライミングスクールの皆さんによるデモンストレーションです」
小学生から高校生の子供達が壁に向かって行進していく。皆、頬が赤く蒸気していて可愛らしい。小学生の男の子が、少し緊張した様子で最初のビール瓶に手をかけた。
「これ、僕が最初に拾ったゴミなんだ」
嬉しそうに言うと、ゆっくりだが確実に登っていく。
その他
公開:20/07/25 22:07
更新:20/07/25 23:06
空想競技

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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