食堂

病院食の味気なさにうんざりしている私に先輩患者が「いい店がある」と病院近くの食堂を教えてくれた。
外見の汚さに、一見すると廃業した店舗にも見えるが中はちゃんとしている。
メニューはなく、注文票に食べたいものを書くとそれを作ってくれる。
値段が分からない以上、あまり高級料理は頼めないがカレーやラーメン程度なら５００円で作ってくれるありがたい店だ。
いつしか私はそこの常連となっていた。
病院をこっそりと抜け出しては食堂で味の濃いものをたらふく食べる。そんな生活を続けていた。

その日も食堂で食事を済ませ、病室に戻ってくると看護師と医者が真っ青な顔で横たわる私の体を診断していた。
ああ…どうやら私はもうすぐ寿命を迎えるようだ。
私は食堂に戻ると一度食べてみたかった本場中国のフカヒレスープを注文した。
これが最後の晩餐となるだろう。しっかりと味わう。
窓の外を見ると風景が三途の川に変わっていた。