木曜日にはあのホルンが聴きたい

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吹奏楽部のチューニング。プワー、ポワーと放課後の空に重なる。グラウンドでは木曜日恒例の模擬試合をしている。ホルンが鳴り風と共にスポーツ刈りをすり抜けた。ドリブルを早める。フェイントはディフェンスを躱し、汗がキラリ舞う。GKが前に出る体勢。助走のエネルギーでボールをとらえて振り抜く。勢いよく蹴り抜かれた球がネットに突き刺さる。GKが四角い顔を歪ませた。模擬試合の1点が人生に与える影響は少ない。けれど称えるように、ホルンはファンファーレを鳴らした。
 蛇口の水が喉を潤す。顔を上げると窓越しに目が合った。ホルン抱く少女は絵画の女神のようだ。

「『あの…』」

暮れた濃紺に声は重なる。

…10年後

「頼まれたお花送っておいたよ」

ソファでサッカー中継をみる。カメラがズームする。相変わらず四角い顔だと僕は笑う。

「ありがとう」
君が微笑む。

今日は木曜日
久しぶりにあのホルンが聴きたい。
青春
公開:20/07/27 15:59
更新:20/07/28 00:48
曜日シリーズ

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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