あーあ。週末。

4
4

名前の知らない花の香りに惹かれるように、わたしは名前も知らない男と知らない町にやってきた。
あぁ。盛り上がる。それだけで。
ナンパをしたのははじめてのこと。緊張かしら。こんなにのどが渇くとは思わなかった。
彼も緊張しているのか、顔を赤らめ入れ歯を出したりはめたりしてる。
「映画みたいな恋がしたいの」
「忠臣蔵とか」
「そういう映画じゃなくて」
「四谷怪談?」
「まぁそんなとこ」
本当はもっと若い男にしたかった。でも私が暮らす村の男たちの大半は母親に食べられてしまった。
私はただ遊園地とかカフェめぐりとか、血を流さない時間を男の人と過ごしてみたかった。
今さら帰ってくれ、なんて言えないし、とりあえず手だけはつないだ。
「なんだかホッとする」
なんでそんなこと言っちゃったんだろう。彼のくちびるが「う」の形で迫ってくる。
はじめてのキス、なんて思ったけどやっぱり無理。
私は彼をかかとから食べた。
公開:20/09/27 16:20
更新:20/09/27 16:20

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容