死生観の違い

何気ない、落ち着いた日常。
「病室から見える景色」という偏見に抗うように、小鳥は木の葉のさざめきを巻き込んで一生懸命に合唱していた。
だが、看護師が用意してくれた雑誌にも興味を示さず、ただ座ったままの男にとって、そんな重奏は耳障りでしかなかった。

「よぉ、体調良さそうじゃないか」
尋ねてきた男の同僚は、再三見舞いに来ていたのか手ぶらだった。
「この前の通夜から一か月も経つ。そろそろ…気晴らしに復帰したらどうだ」
「…大切な人を失った、この気持ちがわからないからそんなこと言えるんだろう」
「お前が人生を全うすれば、天国で嫁さんに会えるだろう」

その言葉を引き金に、男は発作を起こした。
男は同僚を押し倒し、釘を打つかのように何度も、何度も拳を振り下ろした。
同僚の顔面がゆがむのに反して、表情が固まった。

青い血管がはっきりと浮き立った男の首には、十字架のネックレスが垂れていた。