さびブーム

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最近の寿司屋では、山葵を目あてにやって来る客ばかりだ。子供でさえ握りや軍艦巻きを「さびぬき」にはしない。さびの効いていない寿司など邪道という。
また、侘び寂びの精神が粋とされていて、表・裏・武者小路の三千家を筆頭に、どの流派の茶会も予約でいっぱいだ。さらに、山葵を栽培できる清流を求め、茶室から派生して寂れた庵で隠とん生活を送るのが通とされている。
茶室に似せたカラオケボックスでは、サビの部分だけ歌うのが流行りだ。過去のベストソングを集めたメドレーを選曲するケースも多い。そのほか『山葵三兄弟』という歌もヒット中だ。
身体の動きが鈍いのは、「身から出た錆」のせいだと指摘されており、猫も杓子も垢ならぬ錆すりエステに余念がない。今や生身の人体を持つ者のほうが珍しく、巷には人工知能を持つ金属製の機械人間ばかりだから、身だしなみならぬメンテナンスは自業自得だ。
未来は、さびの一大ブームとなっている。
その他
公開:20/09/26 07:56
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山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育ち、大学時代は京都(御所の近く)、大学院時代は湘南(海ではなく山側)で過ごす。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年06月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。

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