ガン患者

日本中でガン患者が増えているらしい。近所の内科は今日も満員だった。
医者は疲労困憊した様子で、レントゲン写真をモニターに広げる。
「あなたもガンですね。ガンガンまではいかない。しばらく様子をみてください。はい次の患者」
「ちょっと待ってください。ガンガンとはなんですか。説明してください」
医者は深いため息をついた。
「ガンにもいろいろな種類があるのです。いつもショックをうけるガーン患者もいれば、自分は鳥だと思い込む雁患者もいる。また、最近はあなたのように猪突猛進になりすぎるガンガン患者も増えてきた。いや、貴方はまだガンガンの手前のガンですが」
「そういうものですか」
「そうなのです。医者の世界も急速にガン患者が増えて困っています。おかげで若い医者は内科など見向きもしない」
支払いを終えて病院の外に出たとたんに、オレは医者の嘆きを理解した。
内科の周りには見事なほど、眼科が並んでいた。