警察の計画（１）

ある雑居ビルの屋上に、美しい女性が一人立っていた。
美しいだけなら、問題はないのだが、残念なことに、彼女は手すりの外側に、また、その美しい顔に憂いをたたえて立っていたのだ。
デジタル化の進んだこの世の中、彼女の存在が日本中に知れ渡るのに、多くの時間はかからなかった。
気づいた通行人が警察に通報する。
近所の住民は様子を撮影し、マスメディアに売る。
テレビ局が駆けつけ、警察の様子や、屋上の女性、近隣住民の声などをカメラに収めようとする。
この騒ぎに、ビルのオーナーも気がついた。
オーナーは屋上へと慌てて向かった。
このビルで飛び降り自殺なんてされたら、ビルの入居者は出ていっしまうし、土地の価値も大暴落間違いなしだ。そんな事を考えながら、オーナーは、かつらのズレを抑えながら、でっぷりと太った体を揺らして、屋上へと到着した。