あの時のように、噴水の中で

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重力に逆らった噴水のせいで、空間に亀裂が入ったということだろう。あの噴水の中は、あの時のまま時が止まったままだ。

あの時、私は噴水の中で、あの人とキスをしていた。誰にも見つけられない場所。
あったかくて、やさしいあの時。


あの人とは、もうとっくに別れた。
あっけなく、噴水は重力にのみこまれて止まった。そして、また逆らい始めた。

私は誰もいない公園でひとり噴水に入る。
顔を噴水の中にうめこむと、あの時のままのふたりがいる。

私はそれを眺めるだけだ。
びしょ濡れになって。
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公開:20/09/27 07:46

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ぼそぼそと創作話を書いています。

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